ぼくらは 高原から
ぼくらの夏へ帰って来たが
死は こののちにも
ぼくらをおもい
つづけるだろう
ぼくらは 風に
自由だったが
儀式はこののちにも
ぼくらにまとい
つづけるだろう
忘れてはいけないのだ
どこかで ぼくらが
厳粛だったことを
あかるい儀式の窓では
樹木が 風に
もだえており
街路で そのとき犬が
打たれていた
古い巨きな
時計台の下までも
風は 未来へ
聞くものだ!
ぼくらは にぎやかに
街路をまがり
黒い未来へ
唐突に匂って行く

— 石原吉郎「風と結婚式」